これまでの「デジタルカメラとフィルムカメラをできるだけ厳密に比較してみる」
デジタルカメラとフィルムカメラをできるだけ厳密に比較してみる(1)
デジタルカメラとフィルムカメラをできるだけ厳密に比較してみる(2)
ほんとうにフィルムで撮った写真は味があるの? レンズの影響は?
前回、センサーサイズが同じでないと比較する意味が無い、というお話をしましたが、今回は「レンズ」について考えたいと思います。
比較の前提②レンズのクォリティ
ところでみなさん、カメラのレンズって、虫眼鏡みたいなレンズが一枚鏡胴の中に入っているわけじゃないってご存じですか? カタログなどを見たことがあれば、きっとご存知ですよね。虫眼鏡状で中央が膨れた凸レンズと、中央がへこんだ凹レンズを何枚も組み合わせて作られています。
レンズが一枚だけのものを単式、複数枚組み合わせて作るものを複式といいますが、複式レンズの技術は1839年にフランスのダゲールという人がダゲレオタイプと呼ばれるカメラを開発した時から始まりました。1839年って、天保9年ですよ! 日本では大塩平八郎の乱の年でごじゃる。翌年には3枚のレンズを組み合わせるペッツバール型が産まれ、1902年にはテッサー、1929年にはゾナー、と、現在でも使われているレンズが誕生していきました。つまり、複数枚のレンズを組み合わせて、きれいに写す技術は、100年以上前に確立していたということです。
単焦点レンズでオートフォーカスやズーム機能などがなく、写りの良さを追求したものが、現在も名前が残っているオールドレンズ、銘玉と呼ばれるものです。というか、ズームやAFの技術はまだ生まれていなかったので、品質として追求すべき点は写りだけだったのですよね。
また、古いレンズは収差補正しきれていない部分や、経年劣化が「味」として語られるので、くっきりはっきり写っていなくても雰囲気が良くなるというのもあります。
一方、現在の最新鋭レンズは、単純に良く写ればいいだけでなく、小型軽量化、AFの速さ、高倍率ズームなど、求められる点が多くなっているので、手に入りやすい価格帯のものだと、どうしても写りに大きな力を注ぐことが難しくなっています。それでも昔のレンズに比べたら、収差補正、光学性能、レンズコーティング技術はものすごく進化しています。開発技術者さんたちの苦労と努力、ものすごいものがあると思います。
また、写真に求められる質が、高精細・ハイコントラスト・発色の強さ・情報量の多さになってきているので、それらに応えるためにくっきりはっきりかちっと写るレンズが多くなります。
求められるものが違うので、古いレンズで撮った写真の「味」は、現代のレンズでは出ないものだと思います。
なので、元の話に戻ると、フィルムに味があるのか、それともフィルムカメラに搭載されているオールドレンズに味があるのか、区別して考えておく必要があるのではないか、と思うのです。オールドレンズ好きなので、特にそう思うんですよね。
オールドレンズを始めてみようかな、と思う方におすすめの一冊。他の本は勧められているレンズが高いものばかりで「そりゃー良いでしょうねヽ(`Д´)ノプンプン」なんですが、手頃なものを紹介なさっているので良い本だなと思っています。Kindle版は20%ポイント還元ですね!